2017年7月21日金曜日

五野井隆史氏の「ドン・ジョアン有馬晴信」書評

 五野井隆史氏(註1)の『ドン・ジョアン有馬晴信』(宮本次人著・2013年海鳥社)書評―福田八郎氏宛て書簡

「拝復、ご無沙汰しておりますが、お元気でしょうか。
この度は宮本次人著『ドン・ジョアン有馬晴信』をほ恵与下さり、有難うございました。
 沸々たる有馬晴信に対する思いが十分に読みとれました。大へん良く勉強され、晴信の実像に迫ろうとし、その再評価の努力はすばらしいと感嘆いたしました。
 クラッセの教会史(註2)に強いこだわりがあるように見えましたが、今なおクラッセに拠って話の切り口を見出されていることに、一寸驚きました。しかし、かような見方・考え方があることを知り、参考になりました。勉強の機会を与えて頂き有難うございました。
 彼岸も近く、ようやく春を感じるようになりましたが、まだ寒さが戻るかと思います。どうぞご健康に留意なさってください。お礼に代えて。
     二〇一三年三月一〇日、五野井隆史
福田八郎先生」

※註1…五野井隆史(1941―)歴史学者、東京大学名誉教授。北海道えりも町生まれ。1971年上智大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。1987年「徳川初期キリシタン史研究」で九州大学文学博士。東京大学史料編纂所助教授、教授。2003年定年退官。英知大学教授、校名変更で聖トマス大学教授。2012年退職。キリシタン史が専門。
※註2…クラッセ著『日本教会史』。著者ジャン・クラッセ(Jean Crasset、1618-1692)は、フランスのディエプ(Dieppe)生まれのイエズス会宣教師。著書『日本教会史全2巻』はフランソワ・ソリエー(Francois Soier,1558-1628)が日本から送られた年報や書簡をもとに纏めていた原稿「日本教会史」(Historie ecclesiastique des iles etroyaume du Iapon)にクラッセが補筆し、1689年にパリで出版したもの。西洋で紹介された日本キリスト教の通史としては初めてのものであった。日本では明治時代になって駐仏公使鮫島尚信が同書第二版を入手し、これを太政官の依頼を受けたフランス人宣教師が翻訳し、『日本西教史』のタイトルで出版された。「史料価値は低い」とされる一方で、日本におけるキリシタン史の最初の通史として、研究者たちに愛読された。


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